Protsch and Solga(2015)「雇用主は労働市場の入り口においてどのように認知的スキル・非認知的スキルをシグナルとして利用するのか」

 

Prostch, Paula and Heike Solga. 2015. "How Employers Use Signals of Cognitive and Noncognitive Skills at Labour Market Entry: Insights from Field Experiments." European Sociological Review 31(5): 521-32.

 

  • 架空の求職者プロファイルを作成して企業に送付することで、どのような特徴の場合に選抜を通過するかどうかという、実験的デザインを用いた研究ですね。倫理的な問題について若干気になるのですが、その辺りがオンラインの補遺に書かれているようなので、後で読みたいと思います。

 

  • ドイツにおける非高等教育から労働市場への入り口として重要な役割を担っているものにデュアルシステムがあり、この採用プロセスにおいて認知的スキル・非認知的スキルがどの程度に雇用主の評価に影響しているかを分析することが目的
  • ドイツでは60%以上の学卒者がデュアルシステムによる訓練を経験する
  • 他方で、この訓練市場は競争的であり、毎年250,000人以上の若者が採用を得られない
  • このように潜在的な候補者が多数いる中で、雇用主はコスト効率的な選抜方法を必要とする
  • 雇用主は、求職者の認知的スキル・非認知的スキルをシグナルとして採用の評価をしていると考えられる
  • Thurowのモデルでは求職者が待ち行列をなし、雇用主によってランク付けされることが仮定されているが、このモデルではランク付けが線形であるかどうかは明言されていない
  • むしろ雇用主のランク付けは非線形的であり、特定のしきい値を設定しているのではないか
  • ドイツの学校では科目成績と生徒の素行に関するレポートが学校から提供されており、これを認知的スキル・非認知的スキルの指標として雇用主も利用している
  • (1)成績平均3.0&素行良好、(2)成績平均2.4&態度良好、(3)成績平均3.4&態度良好、(4)成績平均3.0&素行不良という4種類の仮想的プロファイルを作成して企業に送付し、デュアルシステムの第一段階選抜を通過するかどうかを検証した
  • 結果として、認知的スキル・非認知的スキルの双方が需要サイドの評価に影響している
  • ただし認知的スキル・非認知的スキルは完全な代替関係にあるわけではなく、両者が一定のしきい値に達しない限りは採用の意思決定にはつながっていない
  • また、認知的スキルよりも非認知的スキルを雇用主はより重視する傾向にある
  • これらは採用職種をコントロールしても、ある程度に頑健な結果として確認された
  • インプリケーションとして、(1)認知的スキル・非認知的スキルの効果は線形なのか非線形なのか、より注意を払うべきである、(2)非認知的スキルは性格特性ではなく、訓練によって改善可能なものなので、教育の不平等研究においてもっと研究されるべきものである

 

2019年10月22日

 
英語
  • 今学期は週に2コマ英語での講義を持っているのですが、なかなか負担が重いですね。少しずつ慣れてきてはいますが、土日も準備に追われています。
  • 同じ内容を日本語で書くよりも英語で書くほうが時間かかるというのももちろんありますが、自分の英語力だと雑談で時間を引き伸ばすのが難しいのが辛いところですね。日本語だと資料を少し雑に作っても口頭でアドリブを効かせられますが、英語だとそれができないので、あらかじめ資料を綿密に作っておく必要があります。結果としてさらに時間がかかり、体感としては4,5コマ持っている気分です。
  • コメントペーパーを書かせたり、練習問題を準備したりと工夫はしているのですが、英語で100分の授業時間を埋めるのになかなか頭を悩ませています。というか100分授業っていったい誰が得しているのだろうかとしばしば疑問に感じます。
  • 最近は英英辞典を前よりも積極的に使っていこうと考えているのですが、暇なときにも勉強するようにスマホにもロングマン英英辞典のアプリを入れました。
  • ネイティヴが英英辞典を使うの一般的には動詞や形容詞などのニュアンスを調べるときが多いと思うのですが、あえて名詞を調べるのが楽しいですね。たとえば、"whale"をひくと、"a very large animal that lives in the sea and looks like a fish, but is actually a mammal"と出てきます。もちろん意味を知るだけなら英和辞典で「クジラ」と説明してもらうのがはるかに手っ取り早いのですが、いろいろな英語表現の勉強という面ではあえて名詞を調べるというのは悪くないと思っています。
  • ロングマンスマホアプリは使用頻度の高い単語をトップページに表示してくれたり、クイズ機能がついていたりとなかなか面白いです。ただし無料だと広告表示がひどすぎるので、有料版は必須と言えそうです。

 

科研費
  • 科研費申請の時期ですが、先週が自分の所属機関の締め切りだったので、応募書類の作成に追われていました。
  • 提出後に事務から、「交付額は2,3割減額されるので、もっと多めに申請したほうがよくないですか」、「国外旅費にしては金額が少なくないですか」と連絡がきたのはちょっと面白かったですね。前の所属機関ではこのようなことはなかったので。大学や部局によって研究費に関する文化もかなり違うのだろうなとあらためて思いました。

村上春樹(2017)『騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編』

 

騎士団長殺し 第2部: 遷ろうメタファー編(上) (新潮文庫)

騎士団長殺し 第2部: 遷ろうメタファー編(上) (新潮文庫)

 
騎士団長殺し 第2部: 遷ろうメタファー編(下) (新潮文庫)

騎士団長殺し 第2部: 遷ろうメタファー編(下) (新潮文庫)

 

 

  • 先日、第1部を読んだときに、「いかにも村上春樹的」という感想を抱いたわけですが、第2部に入ってかなり印象が変わりました。
  • 後半部が秋川まりえの視点で展開し、また最終部で「私」が子どもと過ごす場面が描かれるのは新鮮でした。
  • 東日本震災後の世界というきわめて現実的かつ具体的な表象が出てくることにも衝撃を覚えました。もちろん、今までも『ねじまき鳥クロニクル』のノモンハン事件であったり、本書でもナチスドイツのオーストリア併合であったりといった現実の事件が出てくることはあったわけですが、やはり現代かつ人々の記憶にも新しい出来事が描かれると、印象もだいぶ違ってくるのではないでしょうか。
  • 本書の書評を体系的にチェックしたわけではありませんが、こちらの記事にある下記の記述には首肯しました。

「現行の世界」の何かを「明確にブチ殺して入れ替わる」ようなものではなく、あくまで自然に「生まれ変わった自分」が、「満足できる生き方」が自然と「社会の中に見つかる」話になっている。

 

  • 騎士団長を刺殺する場面や、顔ながの通ってきた〈メタファー通路〉に飛び込んでいく場面も、過去作の主人公だともう少し逡巡しそうな気もしたのですが、そうすることが当たり前というような決断のよさでしたね。

ウイダー リカバリーパワープロテイン

 

 

 最近、ランニング後に飲んでいます。炭水化物:タンパク質=3:1というのがエネルギー補給によいらしく、同じメーカーから出ている、「マッスルフィット」や「ウェイトダウン」にくらべると炭水化物の割合が大きくなっているようです。

 ランニング後はエネルギー補給の必要を感じても、胃の調子的にあまり食べる気にはなれないときがあるので、そういった意味で本製品は摂取しやすくよい感じです。

 

Eison(1990)「教室で自信を持つための新米教師への10の格言」

Eison, J. 1990. "Confidence in the Classroom: Ten Maxims for New Teachers." College Teaching 38 (1): 21-25.

  1. 自信を感じるためには、自信を持って行動すること(To Feel Confident, Act Confident)
  2. なぜ自分が教えたいのか観察すること(Examine Why You Want to Teach)
  3. 効果的な教育に関連する特徴を学ぶこと(Learn the Characteristics Associated with Effective Teaching)
  4. 各回の授業に具体的な教育目的・目標を持って臨むこと(Enter Each Class with Specific Educational Goals and Objectives)
  5. 少なく教えるほどよい(Teach Less, Better)
  6. アクティブ・ラーニングの戦略を定期的に用いること(Use Active Learning Strategies Regularly)
  7. 完璧主義者にはならないこと(Don't be a Perfectionist)
  8. 何かを知らないときには落ち着いてそれを認めること(Be Relaxed about Admitting It When You Don't Know Something)
  9. 学生・同僚からの反応を求めること(Ask for Response from Students and Colleagues)
  10. 熱意と活力が勝利をもたらすと心に留めること(Remember that Enthusiasm and Energy Can Carry the Day)

 

Rivera(2012)文化的マッチングとしての採用

 

Rivera, Lauren A. 2012. "Hiring as Cultural Matching: The Case of Elite Professional Service Firms." American Sociological Review 77(6): 999-1022.

 

 人的資本、社会関係資本、そして差別は採用において重要な役割を担っているものの、文化的シグナルもまた雇用主の選択に影響している。分析サンプルにおける評価者たちは、同僚として有能であるだけではなく、楽しい遊び仲間でもあるような人々を新たな採用において求めていた。つまり、より認知的・技術的に優れたスキルを持った候補者を選ぶことよりも、快適さ、妥当性、刺激性といった個人的な感情をしばしば優先していたのであった。社会学者による雇用主の選別行動の典型的な描写よりも、友人や恋愛相手を選ぶ際に多くの点で似たやり方で採用が行われていた。単なる誤差や差別とは到底異なり、従来的な採用の社会学モデルの残差項の中にも、雇用主の積極的な文化的役割がまた含まれているということを、分析結果は示唆している。[1018] 

 

高田明和(2014)『1日10分の坐禅入門――医者がすすめる禅のこころ』

 

 

 もう一つ感じたことがあります。結跏趺坐をすると、まるで宇宙に堂々と一人座るというような心境になるのです。自然と卑屈な気持ち、劣等の感じがなくなり、自分は堂々と生きているという自覚がみなぎってくるのです。これで私は姿勢が如何に重要かを知ったのです。

立っていると眠れないのは背骨、腰、足からの刺激が脳に伝えられ、覚醒させるからです。一方横になると眠れるのはこれらの筋肉、腱の緊張が緩み、刺激が脳に行かなくなるからです。結跏趺坐の場合には、足、腰の腱が引っ張られ、さらに背骨を正すことで背骨の周りの筋肉、腱が緊張し、その刺激が脳を覚醒させるのです。

 

  • 半跏趺坐にくらべて結跏趺坐で坐っていると、明らかに頭がよりクリアになると感じるのですが、足腰の腱の伸びによるものということで、なるほどなと思いました。
  • 「好事も無きに如かず」というのは、含蓄のある言葉ですね。よい物事はさらにそれを求める欲望をかきたてたり、あるいはそれを失う心配を引き起こしたりするから、むしろ無いほうが勝っているという意味ですね。心をなるべくニュートラルに保ち、執着を持たないようにすることを強調する、仏教のらしさが表れた言葉だと思います。