南原繁の言葉―8月15日・憲法・学問の自由


南原繁の言葉―8月15日・憲法・学問の自由

南原繁の言葉―8月15日・憲法・学問の自由

戦後数年間に渡って、東大の総長を務めた人物、南原繁
2006年8月15日、その思想に賛同した人々によってシンポジウムが開かれた。

本書は、そのシンポジウムの記録を基に再構成されたメッセージ集である。


南原繁の思想に一貫するものとして、平和主義、学問の自由の死守というものがある。
教え子を戦地に送り出してしまったことへの後悔、そして敗戦によって多くのものを失った日本は、学問によって再生を果たすしかないというのがその一端だ。

その法学・人文科学の深い教養に裏打ちされたメッセージは、敗戦によって混乱に陥っていた当時の人々に、大きなエネルギーを与えた。


面白くて一気に読んでしまったのだが、やはり時代が違うなという印象を受ける。
1945年は、まだ大学進学者が10%にも満たず、東大の定員も今より1000人以上少なかった。正に東大生はエリートだと、皆が思っていた時代だ。
実際に東大生がエリートだったかどうかはともかく、当時は東大の教授が社会的にリスペクトされ、その発言が大きな影響力を持っていた。今、同じ内容の発言を東大の総長が行ったとしても、人々に同様の影響を与えるということは、おそらくない。

しかし、過去のものだから意味が無いというわけではない。知識人の発言が効力を持ちにくくなった今だからこそ、南原繁のような過去の巨人の言葉を吟味し直す必要があるのかもしれない。