草間俊介、畑村洋太郎『東大で教えた社会人学』

東大で教えた社会人学 (文春文庫)

東大で教えた社会人学 (文春文庫)

東大工学部の人気講義『産業総論』を本に書き下ろしたもの。

本書の目的は2つある。
1つは、エンジニアに不足しがちなマネジメント能力やチームワーク形成能力への視点を開かせること。日本の企業では経営者の多くを文科系出身者が占めている。この原因を筆者は、理科系出身の人間は勤勉であるが、ともすれば自分の興味がモノへと集中し、人を動かす能力に目を向けないからだという。

もう1つは、社会人が身に付けている暗黙知を筆者の経験をもとに紹介することである。
家の購入・結婚・年金など、生活の上で重要だが学校教育ではあまり教えてくれないことについて多く書かれている。

杉並区の和田中学で「よのなか科」という授業があり、社会のルールを教えているが、このような取り組みは必ずしも多くない。国語・数学といったカリキュラムとの兼ね合いもあるが、「自己実現」ばかり言っていないで、社会を生きる上では何が必要かということにもっと目が向けられてもいいと思う。