トルストイ『イワン・イリッチの死』

イワン・イリッチの死 (岩波文庫)

イワン・イリッチの死 (岩波文庫)

トルストイの晩年の作品。凡庸な官吏、イワン・イリッチ・ゴロヴィンが重い病にかかり、死の淵で自らの人生に苦悶するというような話。

何というか、トルストイの思想は合理的、道徳的だ。「なぜ他の誰かではなく、この私が病にかからなくてはいけないのか」という主人公の問いかけはいいんだけど、そこから「実は自分の今までの行き方は道を外れていたからではないか」というような答えに行き着いているあたりが。おそらくドストエフスキーなら「こんなにも善行を積んでいるのに、なぜ他ならぬ私が不幸な目に会うのか」というテーマを好むように思う。

この前、知り合いが「高校時代に校長講話でよくトルストイの話をされた」と言っていたが、このようなことを考えると納得できる。