水月昭道『高学歴ワーキングプア「フリーター生産工場」としての大学院』

高学歴ワーキングプア  「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)

高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)

90年代の大学院重点化によって定員が増えた大学院が、就職難に遭った学生たちを吸い上げ、現在多数の「フリーター」が生み出されてしまっているという話。

この本、話題にはなったけれど、「高学歴ワーキングプア」という言葉ばかりが先行してしまった感じはする。本書で重要なのは、博士課程修了者の中でも格差があり、地方の単科大学がより厳しい事態にあるというように、一括りでは語れないところにある。

筆者自身が、将来の見通しが立っていないこともあり、一種のルサンチマンとも言えるような強烈な訴えが伝わってくる。

何でもかんでも大学の既得権益の保護と見たり、文科省の政策のせいにしたりするのは間違いだと思うが、博士課程修了者を大量に「フリーター」状態にしておくのが人材の浪費だという考えには賛成できる。