苅谷剛彦『学校・職業・選抜の社会学−高卒就職の日本的メカニズム』

やっと読み終わったー。苅谷先生の博論をもとに書かれた本。

最近ではなくなってきているが、学校経由の就職という日本独特の雇用慣行に注目し、日本の高校と高卒労働市場の関係について分析したもの。

高卒者の就職を市場原理に任せるのではなく、「実績関係」を持つ企業に対して学校内推薦を通じて採用されるという仕組みにすることで、生徒はより学校内の勉強や規範の遵守に熱心になる。その結果、よりメリトクラティックな競争が加速するという仮説が面白かった。

エズラ・F・ヴォーゲルがかつて日本社会を指して、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と評したのも、おそらくこのような就職のメカニズムと無縁ではない。

そして90年代以降、学校経由の就職というシステムが衰退してきているということで、その結果得られていた良質な労働力や、学校内の規範への高い適応についても、当然水準が下がってきているというわけだ。