宮寺晃夫『教育の分配論−公正な能力開発とは何か』

教育の分配論

教育の分配論

卒論向けテクスト。

教育の私事化や自由化が進む中で、どのように教育の分配の公正さを保障してゆくかというもの。

例えば初等・中等教育に目を向けると、学校選択制公立中高一貫校の導入といった改革がある。

これらは一見すると、個人の選択の多様性を広げるという意味で良いことに見えるかもしれない。しかし、その選択の前提になる情報や資源には差が存在する。裕福な家庭ほどそのような機会をうまく利用し、さらに高い地位や収入を得てゆくという側面がある。

私立中高一貫校を考えてみると、より問題は分かりやすい。「東京大学学生生活実態調査(2006)」によれば、東京大学入学者のうち、47.4%が私立中高一貫校の出身者で占められている。すなわち、それなりの家庭収入がないとそもそも競争に参加できないという事態がある。果たしてこれは公正だろうかというわけだ。

「一億総中流」と呼ばれた、横並びの平等主義に戻ることはできない。しかし、一方でいわゆる格差や、貧困の拡大が無視できない問題となっている。それについて教育には何が出来るか、どのように教育による資源を分配してゆくかということが改めて問われてきている。