岩井俊二『リリイ・シュシュのすべて』

リリイ・シュシュのすべて (角川文庫)

リリイ・シュシュのすべて (角川文庫)

ネット連載小説がもとになり、後に映画化もされた作品。

物語は、「リリイ・シュシュ」というカルト的な人気を誇る歌姫のファンサイトにおける、掲示板の書き込みを中心に展開されてゆく。匿名空間で繰り広げられる馴れ合い・罵倒。年齢も性別も本当のところは分からず、ただ常連と新入りがおり、共通するのは「リリイ・シュシュ」に影響されたということだけ。

ある日、その掲示板では「リリイ・シュシュ」のライブ会場で起きた殺人事件が話題に上る。
様々な証言をもとに、次第にその掲示板におけるトラブルが事件につながったのではないかという推測がなされる。そして作品の後半部分では、掲示板上ではなく「現実世界」で起こっていた、ある中学生たちの話が長い独白によって語られる。

掲示板上での書き込みという小説のスタイルと、扱われるテーマが暗いもの(いじめ、恐喝、万引き、援助交際、強姦、ネット中傷、自殺.etc)ばかりであることが、読者を大きく揺さぶる。

後半の独白が消化不良に感じられる部分もあるが、傑作だと思った。こういう作品ばっかりだと最近の小説も読もうと思うんだけれど。