池谷裕二『進化しすぎた脳』

東大の薬学系研究科の講師が、高校生向けに行った大脳生理学の講義をまとめた本。

自分が高校時代に、学年で最も優秀だった友達が読んでいて、いつか読もう読もうと思っていたのだが、結局4年越しになってしまった。いつのまにかブルーバックスになって発売されていたらしい。

脳科学の最前線(といっても当時だが)の知見が、噛み砕いて説明されている。高校生との対話形式で進んでゆくので、分かりやすかった。高校時代に生物を学んでいなかった自分にとってはそれでも難しい部分はあったけれども。

自然科学に限らずありとあらゆる分野で言えることだろうけれど、専門的な内容を一般向けに分かりやすく説明することは高い能力が要求される。そして専門的知識というのは細分化されており、一般人が興味を持ち、知りたがっていることは意外と分かっていない。

著者は、まだまだ不完全な理論であることを自認しつつ、恐れることなく現在解明されていることを話してゆく。それが本書の面白さの要因であると思う。


講義というスタイルの長点は新しい話を取り入れやすいということだ。本だと1年近くはかかってしまうし、頻繁に修正するのも難しい。その意味で、講義集という形をとった本書には、読み返すことができるという利点がある一方で、今ではさらに新しいことも分かっているんだろうなあ、と思ってしまう。