金森修『負の生命論―認識という名の罪』
- 作者: 金森修
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2003/01
- メディア: 単行本
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生命倫理学の講義の試験対策用として買ったものだが、今さら読了。
生命科学の分野から4つの独立した論文が掲載されている。
タイトルにある「負」とは著者曰く以下のようなことらしい。
かつて何かを知ることは、知る人を幸せにし、知られる対象を豊かに肉付けすることに結びついていた。だが、現在、認識という行為を“負の経験”としてしか感じられないような事態が一部で進行している。
具体的には、20世紀に入って、人体実験や向精神薬など新たな知見を得ることが「おぞましい」ものとして感じられるような分野が生命科学で開拓されてきたというものだ。
そのようなネガティヴな知の歴史に対して価値判断をせず、あくまで記述に徹し、ときに自分自身に問い返す著者の姿勢には好感が持てた。
もし、自分が何かしら考えや意見を述べるとしても同じような手段をとるのではないかと思う。例えば人体実験を例に挙げてみると、過去の「おぞましい」行為によって得られた成果に少なからず恩恵を受けているわけだし、最先端の医療は常に人体実験の側面を持っている。そうしたことを踏まえるならば、やはり容易には肯定も否定もできない。