伊坂幸太郎『モダンタイムス』

モダンタイムス (Morning NOVELS)

モダンタイムス (Morning NOVELS)

「モーニング」誌上で連載された長編小説。
『魔王』の続編という位置づけらしく、登場人物や設定がかぶっており、いきなりこれから読み始めるのは厳しい箇所もちらほらと出てくる。なので、よくモーニングで連載できたな、と思う。

「検索から、監視が始まる。」と帯には銘打たれており、インターネットが今よりもさらに発達した、2050年頃が舞台。

システムにとって不都合なことを検索する人たちは監視されているよ、でもどこかに悪者がいるわけではなくて、分業化された社会の中で、個々人がそれぞれの役割を果たしているだけで、全体としておかしなことが起きているよ、というような話。でもって、この小説のタイトルの由来となっている、チャップリンの時代よりも、人間が機械化されていることが巧妙に見えにくくなっているよ、と。

伊坂幸太郎はエンターテイメントとしてはよいのだが、思想・哲学を安手のファッション風に扱っているところには、少し嫌な感じがある。おそらく狙ってやっていることなのだろうけれど。


それから読んでいて何箇所がよく分からない部分があった。もっとも違和感を覚えたのは、物語の後半で、主人公が一時期働いていたオフィスビルに戻るところ。検索すれば済むのだったら、わざわざ行く必要はないのではないかと思ったのだが。