伊藤隆敏,西村和雄編『教育改革の経済学』

ゆとり教育」による学力低下や、近年の高等教育改革を経済学的に分析した本。

全部で8章からなっていて、1章に1本論文が載っている。論文の質はかなり差があるように感じた。印象論や単純な相関関係を取り上げただけのものもある(特に2章の西村和雄『「ゆとり教育」を経済学で評価する』)。

あと単に学力低下を実証するだけなら、苅谷剛彦ほか『調査報告「学力低下」の実態』で遥かに精緻にやられていることだし。

面白かった、というか勉強になったのは4章の小佐野広『教育の経済理論――スクリーニング、シグナリング、人的資本』。人的資本モデル、シグナリングモデル、仕事競争モデルなどの特徴が分かりやすくまとまっていた。


しかし全体的な感想を言うと、やはり自分には経済学的な発想はあいませんねえ。読んでいてどこか気分の悪さを感じるというか。

どこが原因なのだろう。一つ考えられるのは、経済学の新古典派の理論が、市場では完全な情報が提供され、合理的な個人が競争していると仮定するからなのかな。

そうは言っても、個人間で持っている情報も情報の活用能力も違うではないか、例えば親の学歴で分断されているではないかと思うわけである。