佐藤博樹,石田浩,池田謙一編『社会調査の公開データ――2次分析への招待』

社会調査の公開データ―2次分析への招待

社会調査の公開データ―2次分析への招待

社会調査に基づく実証的な研究は、通常「課題の設定と仮説の構築」、「データ収集の企画、実施、整理」、「データ分析に基づく仮説の検証」というプロセスからなる。

2次分析(secondary analysis)とは、この中の「データ収集の企画、実施、整理」の部分を省き、すでに存在するデータを利用した分析のこと。

日本でも、データ・アーカイブが整備されてきたことにより、お金のない大学院生でも多くの分析ができるようになってきた。便利な時代になったものである。


本書は様々な公開データについて紹介されており、ところどころ飛ばしながら読んだ。

後半は、公開データを利用した二次分析の例が紹介されており、1996年のISSP(International Social Survey Programme)を用いた、福祉国家の支持率について国際比較を行った論文。

日本では、「増税しても社会支出を増やすべきだ」と考える人が6割を超え、他の国と比べても高い水準にあるというのが驚きだった。

社会保障は充実させてほしいけれど、増税は嫌だ」というのが日本の考え方だと思っていたが、「増税・社会支出増」か「減税・社会支出減」という二者択一で回答を迫れば、前者が支持されるということか。

しかし、自助的精神の伝統がある米国も6割近くになっているし…現状の社会保障に不満があるからこういう結果が出るんだろうか。