苅谷剛彦『学校・職業・選抜の社会学―高卒就職の日本的メカニズム』

ゼミのために1年強ぶりに再読。前に読んだ時とは違って、割とすんなり頭に入った。1年前はそもそもロジット分析を理解してなかったからなあ…。

高校が生徒の就職に積極的に関わり、企業との「実績関係」を通じて労働市場に送り出すという日本に特有のメカニズムに焦点をあてたもの。市場原理による就職よりも、学校が制度的に介入することによって、寧ろより業績的な選抜が促進されるというパラドックスを明らかにしている。


本日のゼミの際に著者本人が、「今から読み返せば、統計手法があやしいところや、得られた知見を超えて言いすぎなところも多く、レトリックでごまかしている。もし今の自分が博論として審査したら、ぎりぎり合格にできるくらい」という旨のことを言っていた。


しかし、分析の粗さは本書の価値を損なっているということはないと思う。著者の本の中で、最も衝撃を受けたのは本書なのだが、単に日本のメリトクラティックなシステムを描くだけではなく、市場に教育の論理が持ち込まれることによる「逆説」というレトリックは見事に成功していると感じる。