松本仁一『アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々』

アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々 (岩波新書)

アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々 (岩波新書)

ジンバブエと南アを中心に、今のアフリカの抱える問題を広範に扱った本。著者は40年間に渡り朝日新聞の記者生活を送った人なのだが、とてもよく取材されている本だと感じた。また、苦境の中でも何とか自らの生活や国の状態をよくしようと奮闘する人々を丹念に追っているところは好感が持てた。

アフリカでは人為的に国境が引かれ、また独立後はかつての日本のように外国からの侵略の危機がなかったことにより、国民国家の形成が遅れた。そして、国家全体の利益よりも特定部族の利益が重視され、ゆえに権力の腐敗が止まらない、という論理にはなるほどと思わせられた。

ただ、独裁をふるう権力者への批判に終始してしまっているところはどうかな。それを生みだすもっと深い構造がどうなっているかが気になったが、ジャーナリズムでかつ新書だとそこまで期待しては駄目か。