大村はま『教えるということ』

新編 教えるということ (ちくま学芸文庫)

新編 教えるということ (ちくま学芸文庫)

著者が一貫して強調しているのは、職業人・専門職としての教師のあり方。

優しくて子どもが好きなのは当たり前で、「教える」ことができなければ教師ではない。どんなに忙しくてもそれは言い訳にはならず、常に研究を行っていなければ教師ではない。家庭に責任を押し付けたり、子どもは言えばやるものだと思っていたりするのは教師ではない、など。また、やればできるといった素朴な努力主義についても否定しており、どんなに努力してもうまくゆかないこともある。それゆえに、日々教える技術を磨くことの大切さを主張している。

また印象的なのは、子どもの間の差異を積極的に認め、個人ごとに適切な教育を与えることを重視していること。横並びがよいというのではなく、だからといって格差をつくりだすことを認めるわけでもなく、どの子どもにとっても「魅力的」な教室をつくらなければならないという。なるほど、奥が深いというか、古典と言われるのもむべなるかなという感じ。