小杉礼子『フリーターという生き方』

フリーターという生き方

フリーターという生き方

読まないとまずい本がどんどん増えてゆく。


フリーターの属性や意識の実態を明らかにした本書の業績は素晴らしいのだが、その解釈の仕方がやや表面的だという感想を禁じえない。

進学費用の問題からフリーターを選択する事例や、労働市場の問題を考慮はしているものの、基本的には若者の「やりたいこと志向」や「自由・気楽志向」、就業意識の低さを著者は問題視している。そして、学校等でのキャリア教育を通じ、正社員という「望ましい職」への就かせてゆく必要があると論じている。

若者の就業意識の低さを批判するのであれば、その前提としてある日本社会が若者を自立した存在として見なさない傾向を先にどうにかしないといけないと思う。また、ギデンズが自己という「再帰的自己自覚的達成課題」というように、「やりたいこと志向」みたいなのが、時代の趨勢であることも踏まえないといけないんじゃあないだろうか。

まあ、本書はフリーターをやっている人を含め、一般向けに書かれた原稿をまとめた本だから、フリーターの意識を問題化することは仕方がないのかもしれない。

あとは、フリーターが高いリスクを孕むものであり、それを事前に十分に教える必要があるということには賛成。安易に文系大学院なんかに進学しちゃいけないよ! というのにも賛成。