谷岡一郎『「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ』

必読文献として紹介されることが多いのだが、読もうと思った時に本屋になくて、ついつい先延ばしになってしまっていた。読書って結構タイミングが重要だと思う。

ダメな調査の事例が並んでいるだけではなく、リサーチ・デザインを行う上での注意点がよく整理されていて非常に勉強になった。

ただ、新聞に対する批判はちょっと厳しすぎるのではないかと思った。新聞はどうしても紙面が限られているので、標本抽出の仕方やサンプル数を掲載することだけならまだしも、どういった意図(仮説)で行われた調査なのかとか、どういった変数を統制しているのかということまで掲載するのを要求するのは酷ではないかという気がする。

むしろ、官公庁の実施する調査についてもっと分量的に多く扱ってほしかった。相当なお金を使って調査しているにもかかわらずお粗末な分析が多く、統計法を盾に個票データを公開していないという点はもっと批判されるべき。民主党はこのあたりの情報公開のあり方についても検討してくれないかな。

また、本書はかなり厳しい口調で書かれているが、2000年ではなく最近出されていたらどうなっていたかと思う。大手新聞がネット調査(笑)の結果を垂れ流すような昨今だと、著者はもっと怒りの感情を吐露していたかもしれない。