熊沢誠『女性労働と企業社会』

女性労働と企業社会 (岩波新書)

女性労働と企業社会 (岩波新書)

改正均等法以後もなお強く存在する、労働市場における性差別について、性別職務分離と能力主義管理を軸として分析がされている。

(1)職場で男女が仕事に対して持つイメージが、職務の上下のステイタスに対応しているため、女性は定型的・補助的作業へと水路づけられる。また、そうした職務の分離が再び、性別職務分離を自然なものとして人々に意識させる。(2)能力主義管理の浸透が既婚女性に対して、厳しいノルマの達成と家事・育児負担の葛藤を生じさせ、上位キャリアへの志向、ないしは就業継続そのものを断念させる。という2点が本書が強調する性差別の構造であったように思う。


本書は主にノン・エリート女性を念頭に置いたものであるが、ILOの「パートタイム労働に関する条約」を日本政府は批准していない、残業規制、ペイ・エクイティへの道のりも遠い、という浅ましい事態を考えるにつけ、専門職や公務員に憧れる女性が周りに結構いるというのが極めてよく納得できた。

あと限られた事例ではあると思うが、労働組合、特にパートのそれの力は馬鹿にできないと改めて思った。ただ、組織率が持続的に下がっているということだけではなく、難しい面もある気がする。合理的に思考するほど労働組合に入るのは選好されにくくなるということがあるのではないだろうか(コストに対するリターンの期待として)。このあたりはもっと勉強が必要だけれども。