真木悠介『時間の比較社会学』

時間の比較社会学 (岩波現代文庫)

時間の比較社会学 (岩波現代文庫)

近代精神の合理主義は、死の恐怖と生の空しさの意識によってふちどられているという、合理性にとって論理的に不可避と思われる事実が、実は特定の時間意識を前提としたものであるというのが著者の主張。それは不可逆的で、量化されている「直線的」な時間意識であるという。そして、その近代社会の時間意識の生成と展開を、(1)人間存在の自然からの自立と疎外、(2)共同態からの個の自立と疎外、という「二重の疎外」の過程として記述している。

有限な人間存在の空しさ、あるいは毎日時間に追われ、支配されている感覚というのが比較社会学の立場から、見事に相対化され、近代社会の時間意識・自我意識が浮き彫りにされている。

かつて東大で熱狂的な支持を集めたというのも分かるというか、とにかく非常に面白かった。願わくばもう少し早く読みたかったけれども。
『自我の起源』、『現代日本の精神構造』あたりも読まなければ。