玄田有史『仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在』

仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在 (中公文庫)

仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在 (中公文庫)

2年くらい前に読んだが、ところどころ飛ばしていたので、今回は一通り読んでみた。トービットや比例ハザードを用いた分析も今なら面白く読めた。


色々と統計が出てきたので、いくつか備忘録として書いておく。

学歴・年齢別完全失業者数→「労働力調査特別調査」

労働力人口に占める常用雇用者の比率、自営業者数の推移→「労働力調査年報」

同一企業内の平均勤続年数→「賃金構造基本統計調査」

有業者のうち年間就業日数別1週間の就業時間割合→「就業構造基本調査」

人事考課の制度・運営上の問題点→「平成10年雇用管理調査 特別集計」

定年制に関する状況→「平成12年雇用管理調査」


大卒ホワイトカラーの中高年男性の雇用が守られている一方で、若年の就業機会が奪われている。フリーターの若年失業の増加は、就業意識が弱くなったからではなく、こうした構造の問題である。若年者はこうした状況を理解したうえで、weak tiesを鍛え、「自分で自分のボスになれ=独立自営を目指せ」。非常にざっくり言ってしまえば、著者の主張はこのようなもの。

統計分析に比べて、若年者へのメッセージ的な部分は粗い感じを受けてしまう。しかし、エピローグの高校生向けの話を読むと、実際に高校生向けに仕事の話をするとなると、粗くならざるをえない、というかむしろその方が有効に伝わるのかなと思った。


日本では自営業者の数が減少傾向にあるのは知っていたが、外国では近年増加傾向にあるというのは知らなかった。ただ、日本ではもともと自営業者が戦後多かったということがあるので、もしかしたら収斂してきているのかもしれない。このあたりは要確認。