橘木俊詔『企業福祉の終焉―格差の時代にどう対応すべきか』

社会保険料の支払いは実質的に企業が負担しているのか、労働者が負担しているのかはちゃんと実証されていないのか。
社会保険を保険料方式から税方式に移行しようという場合、企業が負担していた分を賃金として労働者に与えるべきなのか、それとも内部留保や設備投資にできるのかということで、極めて重要な論点なので、もっと検証されるべきだと思った。


あと、本書の主要部分ではないが、

 高度成長期の日本企業は企業福祉(特に非法定福利)が充実していたが、これが労働者の企業への忠誠心を高めて、猛烈社員として働くことにつながった。この事実への評価は意見が分かれよう。例えば企業の反映を願って労使が一体となって努力するのは、日本の文化なので悪いことではない、という積極的な評価もある。しかし否定的な面があることは確かである。イギリスの労働組合が企業の福祉関与を否定したのは、自分たちの自由が奪われることと、必要以上の勤労を陰に陽に強いられることを避けようとしたからである。やや極論すれば、労働者は企業から搾取されかねない恐れがあるので、あえて企業の福祉関与を否定したのであり、これが否定的な評価と言えよう。
(p.18)

というイギリスの歴史的経緯が面白かった。