武富健治『鈴木先生』(9)

鈴木先生 9 (アクションコミックス)

鈴木先生 9 (アクションコミックス)

生徒会役員選挙立ち会い演説会の場面は、それぞれの登場人物が生徒会役員という仕事(ないしは生徒会という制度)の特徴を余すことなく応酬し、また聴衆の生徒たちもその奢りを見抜いたり、あるいは聴衆ならではの無責任な発言をしたりと、この上なく面白い群像劇となっていた。

生徒会長立候補者の一人(南條)の、「生徒会活動って、がんばった分だけ自分に返ってくる仕事じゃない。一度役員になってしまえば死ぬほど尽くそうと普通にこなそうと、例えば内申書の特記事項欄には同じようにただ役職名が記載されるだけ。そこがたまらなくいい。しかもいっそう嬉しいのは、先生の覚えがよくなったり、内申書に書いてもらえたり、とってもわかりやすいごほうびがついてくる」という一見して矛盾した台詞が、非常に含蓄があって共感できた。