宇野重規『時代のデモクラシー』
- 作者: 宇野重規
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2010/04/21
- メディア: 新書
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「市民」や「国民」という概念ではなく、<私>という視点から、それとは一見して対立しそうなデモクラシーについて結び付けるという試み。
様々な政治哲学・社会学の知見が整理されていて、一種のブックガイドにもなっているが、軸となっているのはやはりトクヴィル。トクヴィルの言う「平等化」、すなわち人々の平等・不平等をめぐる意識が活性化し、それをめぐる対立や紛争が激化しているという枠組みを参照し、「平等社会に生きる個人は、自分が他の誰とも等しい存在であることに誇りを感じる」が、「このことは、他の誰と比べても自分が特別な存在ではないことも意味」し、「平等でしかないことに不安を感じる」と言う[14]。
こうした<私>の平等意識をどのように公的な領域につなげてゆくか。著者が注目するのは、respectを人々に与えるという社会の機能。そして、その手続きとして、答えが自明でないものに対して共同的な決定を行っていくという過程としてのデモクラシー。
デモクラシーに関して包括的なレビューがなされているわけでも、緻密な実証研究でもないが、日本社会の喫緊の問題について新鮮な視点を提示されていて、これこそ新書という感じがした。
またトクヴィルの人という認識以外があまりなかったのだが、優秀な先生だと読んでいて思った。