クリストファー・ジェンクス『不平等―学業成績を左右するものは何か』

不平等―学術成績を左右するものは何か (1978年)

不平等―学術成績を左右するものは何か (1978年)

「教育機会調査」などの膨大な再分析、文献検討に基づいて、社会経済要因のテスト成績への影響、テスト成績が将来の職業的地位・収入へ与える影響など、(教育)社会学が無意識に前提としがちな関係をラディカルに批判していて、読むに値する本だった。
60年代のアメリカでは公民権運動が進められ、また教育はよる人的資本の形成が経済発展にとって重視されていた。そうした時代の影響がまだ残っていただろう1972年に本書が刊行されて与えた衝撃は相当なものだったのだろうと思う。

しかし、収入や職業的地位の不平等を最も左右するのは結局、運・不運なのだと言っているわけで、どうも腑に落ちない。どのような理論が構築されるのかを、社会科学者ならば志向するべきではないか。


ところで邦訳の副題が微妙だ。原初の副題は"A Reassessment of the Effect of Family and Schooling in America"なわけだし、学業成績を左右するものは何かだけではなく、学業成績が何に影響するかということも主題なのだから、違和感がある。