ジョージ・オーウェル『動物農場―おとぎばなし』

動物農場―おとぎばなし (岩波文庫)

動物農場―おとぎばなし (岩波文庫)

 「あたし、目が見えなくなってきちゃってねえ」と、とうとうクローヴァーが言いました。「まあ、若い時分だって、あそこに書いてあるのを読もうとしてもだめだったんだけれどね。でも、あの壁の感じがなんだか違って見えるの。<七戒>は昔と変わっちゃいないかしらね、ベンジャミン?」
 こんどばかりは、ベンジャミンはきまりを破ることを自分に許して、壁に書いてあることをクローヴァーに読んであげました。いまや、<戒律>はたったひとつしかありませんでした。それはこう書かれていたのです。

     すべての動物は平等である。
   しかしある動物はほかの動物よりも
     もっと平等である。

[160-1]

ソヴィエト神話と、スターリン体制を寓話として痛烈に批判した作品。高校時代にPenguin Booksか何かの薄いやつで読ませられたが、すごく面白かったのが印象に残っている。

取りきめられた戒律がだんだんと都合よく変えられてゆく過程、最後には豚(指導者)と人間の区別がつかなくなってしまうという終わり方など、皮肉がうまく出ている。
また、指導者である豚(ナポレオン)が悪役のように見えるが、実は彼がいなくても同様に独裁的な体制に帰結したかもしれないという風にも考えられるところが面白い(ナポレオンだけでなく、後には追放されるスノーボールも牛乳が豚によって独占されるのを支持していたあたり)。