竹内洋『学問の下流化』
- 作者: 竹内洋
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2008/10
- メディア: 単行本
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著者の様々な書評、エッセイなどをまとめて一冊の本にしたもの。なので、学歴エリート論、大学改革論、教養論、学生文化論、夏目漱石と帝国大学について、など雑多な内容なのだが、『学問の下流化』というタイトルだと内容とあまり関係していない。
『「ひけらかす教養」と「じゃまする教養」』あるいは、『「教養主義の没落」以降の教養』の方がまだ合っていると思った。
教養主義について。著者は、文学・哲学などの読書を中心とした人格形成を目指すという意味での教養主義はもはや復活不可能と考えており、また復活させるべきとも考えていない。しかし、かつて教養が伝わる際に、旧制高校における師弟関係や友人同士の濃密なコミュニケーションが重要な役割を担っていたことに注目し、それに対する肯定的な評価を述べ、何とか現代に存続させたいと考えているようだ。
しかし、大学・大学院がこれだけ大衆化した現代においては、むしろ後者による教養こそ実現させるのは困難なのではないか。大学が就職予備校と化しつつあり、大学院もとにかく早く博論を出すような指導に切り替わりつつある現在、立身出世を「じゃまする教養」を教師が伝えることはできるのか。著者が擁護する教養とは、フンボルト理念に示される人間関係とは違うのだろうか。
また、教育改革について「徳育」をカリキュラムで教えることの愚を歴史的な観点から論じていることと、清水義弘先生の追悼本の書評はメモ。