Raymo and Iwasawa(2005)

Raymo, James M. and Miho Iwasawa, 2005, "Marriage Market Mismatches in Japan: An Alternative View of the Relationship between Women's Education and Marriage," American Sociological Review, 70(5): 801-22.



日本、イタリア、スペインなど一部の先進国と、韓国、台湾などの東アジアで起きている、高学歴である女性ほど結婚しないという傾向がなぜ起きているかに対する新しい説明をしている論文。

これまでの研究は、高学歴女性が経済的に自立してきており、結婚から得られる利益が少ないため結婚しないという理由づけをしていた。それに対して、本論文は女性の男性に対する経済的依存が続いており、かつ女性の高学歴化が進むことで高学歴男性の供給が相対的に少なくなっていることに原因を見ている。すなわち、女性の上昇婚hypergamyのチャンスが少なくなることで、高学歴女性が結婚を保留しているという議論である。


データは出生動向基本調査。
1980年と1995年における女性の結婚率を、(1)ある年齢・学歴の男女が結婚する傾向("force of attraction")と、(2)ある年齢・学歴の男性の割合("availability ratio")の2つに分解している。そして、この2つがそれぞれ1980年時点のまま変わらなかった場合の1995年時点の結婚率("counterfactual ratio")を計算するという手法をとっている。

そして、短大卒・大卒女性の30歳以降において、結婚率の減少の一部をavailability ratioの減少が説明しているという結果が出されている。


東アジアや、イタリア、スペインなどのgender-inegalitarianな国でのみ起きている現象ということで、女性の男性に対する経済的依存が持続しているという枠組みから説明がなされるのは、直観的に納得しやすかった。


また、本論文では著者たちは言及していないが、高学歴女性が、低学歴の男性と結婚するよりは結婚をしないという選択をすることは、労働経済学における留保賃金と市場賃金のメカニズムに似ている。サーチ理論とこの分野の研究の接合が今後進むのだろう。