広井良典『コミュニティを問いなおす―つながり・都市・日本社会の未来 』

コミュニティを問いなおす―つながり・都市・日本社会の未来 (ちくま新書)

コミュニティを問いなおす―つながり・都市・日本社会の未来 (ちくま新書)

『定常型社会』、『日本の社会保障』に続き3冊目。広井先生の本はどれもはずれがない。もっと読みたい。


興味をもったところを雑多にメモ。

■現在は少子高齢化の時代だが、子どもと高齢者をあわせた割合はU字カーブを描いてきている。そして子どもと高齢者は地域への土着性が高いため、現在は地域との関わりが強い人々が増加する入口の時期にあたっている。


■「個人が独立しつつつながる」、都市型の関係性をつくってゆくことが必要である。


■都市の本質は、ヴェーバー『都市の類型学』によれば、(1)ひとつのまとまった「団体」としての性格を持つこと、(2)「市民」という身分的資格の概念が存在すること。都市は城壁という「外部との境界」を持っており、その内部にいる成員が市民であった。都市型コミュニティも農村型コミュニティも「外部」をもっていることに変わりはないが、成員の間のつながりの原理が異なっている。農村型コミュニティが情緒的・非言語的な「共同的一体感」で結びつけられているのに対し、都市型コミュニティは言語的・規範的な「個人をベースとする公共意識」によってつながっている。


■北欧では公有地の割合、および社会住宅の割合が高い。福祉政策と都市政策を統合した観点、福祉に空間的を入れる「福祉地理学」の可能性、また「持続可能な福祉都市」への展望。


■「フローに関する社会保障」から、「ストックに関する社会保障」へ。住宅、教育、相続などのストックに関する社会保障が重要になってくる。また、土地への課税は脱税が困難であるとともに累進的な設計が可能な、公平かつ効率的な課税の装置である。


■日本は、普遍的な価値やルールのなさが都市型コミュニティの形成を困難にさせ、個別の場面での関係や調整という、「空気」によってつながる状況を生み出している。また。キリスト教イスラム教ユダヤ教のような宗教的ベースが日本にはない。儒教も本来持っていた普遍的な原理を、家族主義に矮小化するかたちで輸入された。それでも高度経済成長期は、経済成長が国民全体の目標になりえたが、現在ではそれもない。


■農業革命、歴宗教への精神革命、科学革命を経て、「三度目の定常化の時代」にあたる今後の普遍的な価値原理は、地球の「有限性」、リージョナルな「多様性」が重要な要素となる。