清水幾太郎『オーギュスト・コント―社会学とは何か』

伝記部分および、著者がコントに関わるきっかけとなった理由の部分の記述が厚く、いわゆる三段階の法則や、コントが進めた実証主義的な精神に関わる部分は記述が薄かった。そちらの方により興味があったのだが。


重要だと思ったのは、『実証哲学講義』は啓蒙主義批判として成り立っていることや、フランス革命がコントの思想に大きく影響しているということ。それから、サン・シモンとはかなり緊密な師弟関係だというイメージを持っていたのだが、それは1825年頃までの話で、その後はサン・シモンの思想からは離れて行ったということは知らなかった。


それから、なぜコントは社会学において、経済学におけるアダム・スミスの位置を占めることができなかったのか、というのは突き詰めると面白いテーマだと思った。本書の中では、アダム・スミスが還元主義的な立場を取り、演繹的な体系を築くのに貢献したのに対し、コントは「総合社会学」と言われるように、還元主義的な立場を嫌ったから、というようにさらっとしか扱われていなかったが。