加藤節『南原繁―近代日本と知識人』

南原繁―近代日本と知識人 (岩波新書)

南原繁―近代日本と知識人 (岩波新書)

これまで主に知っていたのが東大総長時代の南原繁であり、徹底した近代主義者、すなわち個人の自立に強い価値を置いていた人物だと思っていた。
しかし、幼少時の環境による共同体主義的な価値を信奉してもおり、それが著作の政治哲学の中にも見出されるというのは面白かった。


内務官僚としての経験、ナチスへの批判、東大総長としての戦後改革への関わりなど、本書の著者が一貫して描き出している「理想主義的な現実主義」、すなわち理想と現実の二分法のもとに、理想からかけ離れた現実を批判し、可能な限り現実を理想に引きつけようと格闘した姿勢は、たいへん魅力的だった。