加藤節『南原繁―近代日本と知識人』
- 作者: 加藤節
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1997/07/22
- メディア: 新書
- 購入: 3人 クリック: 11回
- この商品を含むブログ (18件) を見る
これまで主に知っていたのが東大総長時代の南原繁であり、徹底した近代主義者、すなわち個人の自立に強い価値を置いていた人物だと思っていた。
しかし、幼少時の環境による共同体主義的な価値を信奉してもおり、それが著作の政治哲学の中にも見出されるというのは面白かった。
内務官僚としての経験、ナチスへの批判、東大総長としての戦後改革への関わりなど、本書の著者が一貫して描き出している「理想主義的な現実主義」、すなわち理想と現実の二分法のもとに、理想からかけ離れた現実を批判し、可能な限り現実を理想に引きつけようと格闘した姿勢は、たいへん魅力的だった。