小室直樹『ソビエト帝国の崩壊―瀕死のクマが世界であがく』

古本で比較的安く買えた。ソ連の崩壊を1980年時点で理論的に予言した(のですごい)とされている本。
1980年当時の時代的な雰囲気は分からないが、オーソドックスな宗教社会学(特にエートス論)、官僚制の理論からの分析は勉強になる。


特にマルクス主義とユダヤ教の類似を指摘しているところは、議論は必ずしも緻密ではないが、非常に面白い視点であった。
マルクス主義における歴史の段階的把握、すなわち原始共産制、古代奴隷制、封建制、資本制、社会主義共産主義というものが、ユダヤ教における神との契約による救済という歴史認識が極めて類似しているという。
そして、こうしたマルクス主義とユダヤ教の類似から、マルクスによる労働者階級による革命に対して出される疑問、「労働者による革命が、世界史的展開の一過程であるのならば、だれも革命のために努力する必要はないのではないか」への解答が得られるという。すなわち、ユダヤ教においては神との契約を守ることが、ユダヤ人が救済されるための条件であり、同様にして社会主義革命においては賤民である労働者階級が、マルクス、レーニンに導かれて世界史の発展法則を守らなければいけないというもの。