久米郁男『労働政治―戦後政治のなかの労働組合』

労働政治ー戦後政治のなかの労働組合 (中公新書 (1797))

労働政治ー戦後政治のなかの労働組合 (中公新書 (1797))

日本の労働組合は経済合理主義の路線を選択し、80年代までは行政改革規制緩和に積極的であった。しかし、1989年に連合が結成されてからは、共産主義勢力を排除したにもかかわらず、規制緩和への積極性を失ってしまった。それはなぜかという問いが発せられる。
労働戦線の「統一と団結」を急ぐあまり、民間労組主導の労働運動路線を、官民統一の際に連合内で十分に貫徹させなかったから、というのが本書の主張。

労働戦線の統一がなっていなかった80年代には、同盟やIMF-JC(国際金属労連日本協議会)などが民間労組を代表し、左派的な総評内の主流であった官公労の既得権を擁護する方針に対立した。その結果、個別利益を抑制することができた。
しかし、経済合理性路線についての明確な合意がなされなかった連合では、個別利益に対抗する論理がなくなってしまったという。
著者によれば、労働組合が今後も意味を持つとすればこの観点からで、個別利益を追求して国民経済の効率を犠牲にするのではなく、ポジティブ・サム的な改革政策を推し進めることができるかどうかであり、連合は包括的利益団体として経済合理主義的な路線を再び発展させるべきとのこと。