プラトン『プロタゴラス—ソフィストたち』


プロタゴラス―ソフィストたち (岩波文庫)

プロタゴラス―ソフィストたち (岩波文庫)

『メノン』などと同様に、「徳は教えることができるか」がテーマの一つになっている。

当代随一のソフィストとの評判の高かったプロタゴラスの下に、アポロドロスの息子ヒッポクラテスが学びに行こうとする。
ソクラテスソフィストとは何を教えることができるのかを知らないのに、プロタゴラスの下に行くというのは、魂(プシュケー)を危険にさらすものだとヒッポクラテスに注意をする。

プロタゴラスのもとに赴き、ソクラテスとの対話が始まるが、他の対話篇とは異なり、ソクラテスはあまり粘着質な問答を行っていない。年長者であり、名望高いプロタゴラスへの配慮があるように見える。

初めはソフィストは何を教えることができるかというソクラテスの問い、それは国家社会ための技術であるというとプロタゴラスの答えからやりとりが行われ、しだいに徳の部分である知恵や勇気は固有の機能を持っているのか、快楽を追及するのは善い生であるのかという対話に逸れてゆく。
終わりには、徳は教えられるかという問いに対して、ソクラテスプロタゴラスも、当初自分たちが持っていた考えと逆の主張をせざるを得なくなるという、ややパラドキシカルな結果に至る。

他の対話篇ほど緻密な議論が行われているとは言えず、解説で指摘されるように、ソクラテスプロタゴラスの対話の劇的描写がこの一篇の見るべきところであると言えるかもしれない。
特に、プロメテウスが人間に技術知を与えたという、プロタゴラスが語る物語(ミュートス)は面白い。