スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)

典型的なロマンティック・ラヴ、すなわち身分違いの恋→それが届きそうになった→と思ったら手のひらを返されてしまった、という展開だと理解した。

村上春樹は翻訳者のあとがきにて、「翻訳とは作品を現代に蘇らせる作業」というようなことを書いている。そのため、言い回しなどはかなり工夫されていると思う。とはいえ、作品中で描かれている人々の様子はやはり20世紀前半のアメリカだ。特にギャツビーやトムの周りで繰り広げられる社交文化は、ヴェブレンが指摘したような「有閑階級」を思わせる。

しかし、デイジーがギャツビーに弔辞さえ送って来なかったというのには驚きだ。彼女の転身ぶりはコケティッシュというのとも違うし、一種の錯乱状態だったと理解するのが妥当なのか。(例えばドストエフスキーの『白痴』におけるナスターシャのような)