ロバート・アクセルロッド『つきあい方の科学―バクテリアから国際関係まで』

つきあい方の科学―バクテリアから国際関係まで (Minerva21世紀ライブラリー)

つきあい方の科学―バクテリアから国際関係まで (Minerva21世紀ライブラリー)

囚人のジレンマにおいては、未来係数wが十分大きければ、相手のとる戦略に関係なく、最善の結果を引き出せる戦略は存在しない。[15]

しかし、囚人のジレンマ選手権においては「しっぺ返し(tit for tat)」が非常に強い結果を示した。
しっぺ返しの成功の秘訣は、(1)上品であること(自分からは決して裏切らないこと)、(2)相手の裏切りには即座に報復すること、(3)心が広いこと(一度裏切りにあっても、相手が再び協調をすればこちらも協調すること)、(4)相手に対してわかりやすい行動をとること。

しっぺ返しは未来係数wが十分大きく、かつそのときに限って集団安定である。wの臨界値は点数表の4つの値である、T(Temptation)、R(Reward)、P(Punishment)、S(Sucker)の関数であり、(T-R)/(R-S)と、(T-R)/(T-P)の大きい方の値として表される。[60]


プレイヤーの間に強い敵愾心がある場合にも、協調が生まれる場合がある。第一次世界大戦時の塹壕戦の例。


集団中のすべての個体がある戦略を採用していて、別の戦略をとるごくまれな突然変異の個体が侵入を試みても必ず失敗するならば、このときに多数派がとる戦略は進化的に安定であるという。[99]


二個体が将来つきあう回数を当事者たちが知っているときには、いつも裏切る戦略だけが進化的に安定となる。[98]


安定した協調関係が生まれるためには、つきあいが長期に渡り、かつこれまで自分がつきあった相手を識別できるような場合である。バクテリアは、一個体としかつきあわず、相手の最近の挙動にのみ反応するという戦略を用いている。


「全面裏切り」の中においても、内輪づきあいをする割合が高くなれば、それを打ち負かすことができる。実際、しっぺ返しはいろいろな戦略が混在するときに、たくましさを発揮した。[106]
協調関係の進化のためには、何らかの社会構造が必要である。レッテル、評判、法規、領域性など。[150]


非ゼロ和社会においては、自分の利益を高めようと思うなら相手よりもうまくやろうと思う必要はない。大勢の違った相手とはつきあう時は特にそうである。[117]


チェスのようなゼロ和ゲームとは異なり、囚人のジレンマにおいては相手がこちらをやり込めようとしていると決め付けるべきではない。[128]


うまくやるコツは他人に勝つことではなく、他人からうまく協調を引き出すことである。[198]