Palme(2006)

Palme, Joakim, 2006, "Welfare States and Inequality: Institutional Designs and Distributive Outcome," Research in Social Stratification and Mobility, 24(4): 387-403.

○様々な国家間比較の研究にもかかわらず、福祉国家それ自体はブラックボックスのままであるというのが著者の問題提起。


○Social Citizenship Indicator ProgramとLuxembourg Income Studyから、(1)家族政策と子どもの貧困率、(2)失業保険と現役世代の貧困率、(3)老齢年金と高齢者の貧困率を事例とした分析。


福祉国家の制度的なデザインと、社会権(social rights)の水準と分布を理解することが鍵であるという主張。


○著者のこれまでの研究で用いられている、targeted, basic security, state-corporatist, encompassingというモデルの分類。


○general family supportよりもdual earner supportへの支出が子どもの貧困を減らしていること、失業保険の所得代替率の高さが現役世代の貧困率を減らしていること、かつ所得代替率福祉国家の制度的デザインに媒介されていること、basic securityよりもincome securityを重視した老齢年金の方が高齢者の貧困率が低いことなどが知見として得られている。


○「再分配のパラドックス」の議論の補強。例えば、公的年金の水準に関しては、targetedモデルが最も平等である。しかし、総所得で見るとstate-corporatistモデルとencompassingモデルのほうが平等になる。income securityに重きを置いたこれらのモデルでは、私的年金のcrowding outが起きるから。


○以上から、福祉国家はむしろ貧困を増大させるというskeptical hypothesisや、福祉国家の支出の規模が貧困率を決めるというsize hypothesisは成り立たないと結論づけている。


○ただしsmall Nの問題。


○疑問:この手の分析はtime series pooled OLS + Huber-White robust standard errorで行われていることが多い。固定効果モデルやランダム効果モデルで推定しないのはなぜなのか。別の論文の注で理由が述べられているものがあったが、よくわからなかった。