Rosenbaum et al.(1990)

Rosenbaum, James E. et al., 1990, "Market and Network Theories of the Transition from High School to Work," Annual Review of Sociology, 16: 263-99.

アメリカにおける高卒者のトランジションについて、様々な理論の問題点を指摘。日本の事例を引きつつ、ネットワーク理論の有効性を主張。


人的資本理論は、若年者が安定的な仕事に就けないことを人的資本投資の不足によって説明する。しかし、なぜ労働力不足の時期においてさえ、若年者が自己投資を行わないのかを説明できない。


シグナリング理論は、若年者が自己投資に失敗することを説明できるが、若年者がどのシグナルを利用しているのかが考慮されていない。


労働市場の分断理論は、雇用主がどのように、またどの程度に労働者を二次的労働市場に留めているのかを説明していない。また、この理論は二次的労働市場は市場の圧力に弾力的でないことを想定しているが、労働力不足の際に雇用主がどのような行動をとるかが分かっていない。


ネットワーク理論は、上記の理論に比べて節約的(parsimonious)ではないが、制度的なつながりへの投資に注目することで、より市場におけるプロセスをうまく説明することができる。