Duneier. 2011. "How Not to Lie with Ethnography".


Duneier, M. (2011). "How not to lie with ethnography". Sociological Methodology, 41(1), 1-11.

 一般的にエスノグラフィー研究では、ランダムサンプリングが可能ではなく、想定される母集団が曖昧なことが批判されることがあります。利用可能な観察の数が少ない場合には注意深いサンプリングが必要だというのが、多くの研究で指摘されるところです。例えば、King, Keohane, and Verba(1994)のDesigning Social Inquiryでは、説明変数のカテゴリに沿って観察を選択することが1つの方法として勧められています。しかし、本論文の著者が勧めている方法は、観察を行う以前ではなく、終わった後に行うというものです。Geertzのインドネシアにおける闘鶏の人類学的研究を事例に説明がされています。

 具体的には、次の2つの思考実験(thought experiments)を行うとよいとしています。(1)エスノグラファーが観察を行ったサンプルの外に、その議論に影響を与えそうな人々・観点・観察はあるかどうか、(2)エスノグラファーが観察を行ったサンプルの内に、その理論や一連の議論によって、自分自身が戯画化されていると感じるような人々がいるかどうか。このようにして、不都合なサンプル(inconvenient sample)を作り出すことによって、自らの研究におけるバイアスの存在やニュアンスの不足が明らかになることがあるという利点が挙げられています。

 体系的なバイアスをもたらす要因を仮想的に考慮するということは、観察の数が多い定量的研究にも役立つことだと思います(omitted variablesが結果の解釈をどのように変えうるかなど)。