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小島寛之『文系のための数学教室』

読書

文系のための数学教室 (講談社現代新書)

文系のための数学教室 (講談社現代新書)

 さて、この本は、表面的には文系向けのネタを並べてある。人口統計の棒グラフとか、論理的な話し方とか、株価、市場経済、民主主義、進学、哲学等等である。しかし、その料理の食材として、現代数学の初歩を仕込んであるのだ。列挙すれば、ルベーグ積分、数理論理とゲーデルの定理、トポロジー距離空間関数解析、選好理論、確率積分とブラック=ショールズ公式等等の比較的新しい理論である。[p.5]

 まえがきにもちらっと書いたが、筆者は実は数学が苦手だった。正確にいうと、得意だったものが苦手になった。まがりなりにも東大数学科に進学したぐらいだから、中学・高校のときは、さすがに数学で苦労したことはなかった。数学の問題を解いたり、数学書を読んだりすることがこのうえない喜びだった。
 しかし、数学科に進学してからが地獄だった。同級生には天才が多く、博識で、どんな抽象的な概念も真綿のように吸収した。彼らに追いつくためには生まれ直して勉強し直さなくてはだめだとさえ思った。[p.208]

 数学に挫折して経済学に転向した経歴を持つ著者は、数学は得意ではなくても好きにはなれるという主張をします。そのために上述されるような様々な、「文系」トピックが出てきます。微分積分という流れではなく、積分微分という流れで教えた方が、グラフのイメージで理解しやすいというのはなるほどと思いました。
 また、高校時代に自宅から離れた環状線の駅から自宅まで歩いて帰宅することになった際に、ジョルダン閉曲線の定理を利用したというエピソードがおかしいと同時にすごいと感じました。