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Park (2010) "The Stability of Self-Employment: A Comparison between Japan and Korea"

Park, Hyunjoon. 2010. "The Stability of Self-Employment: A Comparison between Japan and Korea." International Sociology 25:98-122.

 韓国は現在のOECD諸国の中でも、自営業の割合が非常に高い国の1つです。一方、日本は、現在では自営業の比率は他の先進国とそれほど変わりませんが、伝統的には自営セクターの規模が大きい国でした。

 本論文は、日韓の自営業を職業別に分析し、さらに自営業からの退出(離職のハザード)に注目をしています。また、日韓両国の違いについて、制度的な差異と関連付けた議論を行っています。

 具体的には、日本では熟練ブルーカラーの比率が高く、韓国では販売職の自営労働者が多いという違いが見出されています。日本は戦後、労働市場が企業規模によって分断された「二重構造」による経済に依存してきたという経緯があり、大企業は中小企業に比べて、競争力・昇進可能性・福利厚生などの面で優位に立ってきました。一方で、特に製造業では、大企業は中小企業と下請の関係を緊密に結んできており、これが熟練ブルーカラー労働者の源泉となってきたといいます。こうして中小企業で経験を積んだ熟練ブルーカラー労働者が、自営として独立するという制度的な仕組みが存在してきたと分析されています。

 一方で、韓国では大企業と中小企業の下請関係というのは日本ほどは発展しなかったといいます。韓国の経済において重要だったのは、小規模の販売・サービス業という、「インフォーマル」なセクターだったといいます。後発的な近代化を経験した韓国では、地方から都市への急激な人口移動が生じましたが、これらの人々を「フォーマル」なセクターが完全に吸収することはできず、結果として「インフォーマル」なセクターにおいて、自営業の割合が大きく残り続けてきたということです。

 また、ハザードモデルの結果から、韓国では自営からの退出が多く、日本ほど安定していないことや、日本の販売職自営業は、韓国よりも退出が少ないということが明らかになっています。

 男女差については、日韓ともに女性は男性よりも家族従業という形で働きやすいという特徴があります。また、日本でのみ、結婚していることは女性の自営からの退出をしにくくしているという結果が得られており、これは結婚が仕事とコンフリクトを起こしやすい日本において、自営業は女性が結婚後も働き続けることができる数少ない手段かもしれないという推論がなされています。