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Mahoney (2008) "Toward a Unified Theory of Causality"

Mahoney, James. 2008. "Toward a Unified Theory of Causality." Comparative Political Studies 41:412-36.

 比較研究における方法論について、著者は"case-oriented"と"population-oriented"という分類を用いています。これはRaginのいうところのcase-oriented"と"variable-oriented"という用語を修正したものだということです。これらの研究方法の違いについて、本論文では両者の因果関係についての捉え方に焦点を当て、また両者を架橋する可能性について議論が行われています。

 case-orientedな研究では、ある特有のケースにおける結果の説明に関心が持たれます(例えば、なぜヨーロッパ諸国は戦時中に、自由民主主義・社会民主主義・全体主義のレジームをそれぞれ発展させたのか)。こうした研究では、そのケースにおいて、結果を引き起こした変数の値を特定することが試みられます。

 case-orientedな研究では、因果関係は必要条件や十分条件といった論理的な要件で捉えられます。しかし、ある単一の変数が必要条件や十分条件といったことはめったになく、「結果にたいして、それ自体は必要ではないが十分である条件の一部であるところの、十分ではないが必要な条件」(an insufficient but necessary part of a condition which is itself unnecessary but sufficient for the result: INUS)という観点から、因果関係が捉えられます。INUSの例としては、建物の火事( Y)は、電気系統のショート( A)と木造建築( B)が組み合わさるか、あるいはガソリン( C)とかまど( D)が組み合わされば起きるとします。

 この時、 Y = (A \land B) \lor (C \land D)と表されます。イコールは十分条件であることを表しています。 A,B,C,Dのそれぞれは必要条件でも十分条件でもなく、それらの組み合わせが十分条件を構成しているということです。同様にして、「結果にたいして、十分ではないが必要である条件の一部であるところの、必要ではないが十分な条件」(a sufficient but unnecessary part of a factor that is insufficient but necessary for the outcome: SUIN)という用語もcase-orientedな研究では用いられるとのことです。

 これに対してpopulation-orientedな研究は、母集団における平均因果効果に関心が持たれます。ここにおいて因果関係は、結果が起きる確率を上昇させる要因(probability raisers)という捉えられ方がされているとします。こうした確率論的な捉え方をcase-orientedな研究に持ち込んでしまうと、 N=1の研究は意味がないというようになってしまいます。

 両者の因果関係についての捉え方の違いを架橋することは可能なのでしょうか。著者は可能だと言います。population-orientedな研究において、ある変数が結果に対して部分的な効果を持っているというのは、case-orientedな研究におけるINUSな変数であることとほぼ一致しているからだというのです。

 例えば、喫煙と癌の関係について考える際に、特定の個人について喫煙はINUSの要件を満たします。なぜなら、喫煙が癌を引き起こすためには、それ自体だけではなく、生物学的・環境的要因と組み合わさる必要があるためです。一方で、母集団において喫煙は癌を引き起こす確率を高めるため、部分的な効果を持つ変数でもあります。

  著者は、このようにして両者の言語を「翻訳」することは有益であるとしています。さらにこうして明らかになる要因を、QCAなどを用いて複雑な交互作用を探求するのがよいと述べています。