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Buchmann et al. (2008) "Gender Inequalities in Education"

論文

Buchmann, Claudia, Thomas A. DiPrete, and Anne McDaniel. 2008. "Gender Inequalities in Education." Annual Review of Sociology 34:319-37. 

  Yさんから質問をいただいたことと関連する論文だったので、読み返しました。教育のジェンダー不平等に関して、アメリカの実証研究をレビューした論文です。

  • かつて教育のジェンダー不平等に関する研究は、教育におけるあらゆる側面が女性に不利に働くとみなす傾向があった。しかし、今日ではこれは妥当ではない。
  • アメリカでは1982年に、女性の大学卒業率は男性に追いついた。その後も上昇を続けており、今後も男女差は拡大しそうである。
  • 大学卒業率を女性が上回っていることの原因は、大学入学以前から生じている。女子は男子よりも高校までの成績が平均して高い傾向にあり、これは1950年代にはすでに起きていた。
  • 女子はテスト得点だけではなく、社会的スキルの面でも優位に立っている。女子は男子に比べて教室における問題行動が少ない。これはよりよい学習行動につながったり、教師からの好ましい評価につながったりしている。こうした非認知的能力の違いは、男子がある領域ではより高いテスト得点をあげるにもかかわらず、女子のほうが平均してより高い評点(grades)を得ることも説明する。
  • ジェンダーの不平等に関する社会学的な説明は、生物学的な差異を無視し、社会的・経済的要因にのみ焦点化する傾向がある。男女の差異に生物学的要因が関わっているという主張をすると、すぐに性差別主義者(sexist)というラベルを貼られてしまう。しかし、生物学的な仮説は必ずしも性差別主義であることにはならない。認知能力において、より女子が優れている面と、より男子が優れている面があることは、すでに明らかにされている。しかしながら、運動能力、性意識、攻撃性といったもの比べると、認知の面における男女差は小さい。
  • 女子は高校の中退率がより低い。特にマイノリティの男子では、マイノリティの女子に比べて中退率の差が大きい。
  • 女子の学業成績の高さは、教育熱(aspirations)の高さにもつながっている。アメリカだけではなく、OECDのほとんどの国において、女子の方が大学進学をより希望している。
  • 大学教育に対するリターンに注目すると、高卒女子に対する大卒女子の賃金は高まっている。しかし、高卒男子に対する大卒男子の賃金はさらに高まっている。これは、高卒男子が占めていた高賃金の製造業が衰退したことが理由だと考えられる。ただし、賃金だけではなく、失業や貧困リスクといった要因も含めて計算すると、女子に対する大学教育の利益がより高まったことを示す研究もある。
  • 個人の持つ資源やインセンティヴだけではなく、大学進学を決める上での制度要因も考慮する必要がある。例えば、労働市場における女性差別や性別職域分離の縮小は、女子に大学進学のインセンティヴを与える。また、制度要因としては他に大学進学と競合する、軍隊の役割も検討する必要がある。
  • アメリカでは性別役割分業意識が大きく変化してきた。性別役割分業意識がより平等化されたことが、女性の大学進学の増加とも関連している。

 

 ちなみに、一番新しいOECDの統計を調べてみたところ、25-34歳の大学卒業率で見た際に、韓国も男女差がすでに逆転しているのですね。知りませんでした。