Lucas (2001) "Effectively Maintained Inequality: Education Transitions, Track Mobility, and Social Background Effects"

Lucas, Samuel R. 2001. "Effectively Maintained Inequality: Education Transitions, Track Mobility, and Social Background Effects." American Journal of Sociology 106: 1642-90.

 読むのは何回目かなのですが、通した理解がきちんとできていませんでした。というのも長いのですよね、この論文は。大学院の授業でも対象になったことがあるのですが、「最近の英語論文は無駄に長いんだよなあ」と、S山先生がぼやかれていた記憶があります。

 前に読んだ時のメモ書きによると、教育の移行段階が後になるほど、社会階層の効果が逓減してゆくという知見に関する2つの説明(ライフコース的な観点からの説明と、MMI仮説)の問題点と、Cameron and Heckman(1998)によるMareのモデルへの批判にどのように答えるか、という部分が重要であると感じていたようです。しかし今回は、そもそも移行研究とトラッキング研究が、それぞれ別々に発展してきていることの問題意識が前提として著者にはあるのだということに気づきました。

 分析モデルも、今読んでみると理解が進みました(これは授業で読んだM1の時には絶対に分かりませんねえ)。順序プロビットに、時間変化する共変量を導入することで、移行段階ごとに特有なパラメータを推定するというものです。移行段階ごとに観察される従属変数のカテゴリ数が異なっているのですが(高校の学年が変わる段階では、中退、数学を選択しない、大学進学向けではない数学を選択、大学進学向けの数学を選択の4つである一方で、高校卒業の段階では大学に行くかどうかのみ)、大学が質的に異なっている可能性を潜在的に認めつつも、観察される値としては二値(右側センサーされている)として扱うという方法が興味深かったです。