Kugel (1993) How Professors Develop as Teachers

Kugel, Peter. 1993. "How Professors Develop as Teachers." Studies in Higher Education 18: 315-28.

 

 学生が学ぶ能力を獲得してゆくように、大学教員も教授能力を段階的に発展させてゆくというモデルを提示している論文です。

 

  • 第1段階(自己):教員は教室における自己の役割について、主に意識を向けている。
  • 第2段階(科目):第1段階における役割を、少なくともある程度は獲得できたと感じられるようになると、自らが教えるべき科目の理解に意識を向けるように移行する。
  • 第3段階(学生):学生が教えられたことをどれだけ吸収できるのかに、目を向けるようになる。
  • 第3段階と第4段階の間では、教授(teaching)から学習(learning)へという、より一般的な移行が起きる。
  • 第4段階(能動的に捉えられた学生):学生が教えられたことを学ぶ手助けをすることに、典型的には移行する
  • 第5段階(自立的に捉えられた学生):学生が教えられたことを自ら学ぶ手助けをする
  • この他に、第0段階として「準備」(大学院時代)と、第6段階として「調律」(tuning)がありうる。

 

 これはインフォーマルな観察を通じて構築された、あくまで典型的と考えられる1つのモデルであるとされています。また、あるいはある段階から進まない教員もいることや、生物学的な発達とは違って、後の段階ほどより能力が高いことを意味するとは限らないことも断られています。

 いずれにせよ、自分の経験を振り返ってみる上では、なかなか興味深いモデルだと思いました。たしかに初めて教壇に経った際は、まさに著者の述べるような第1段階であり、いったいどのように話を始めたらよいのか、若干途方に暮れた記憶があります。

 第3段階から第4段階への移行は、いわゆるteachingからcoachingへというものですね。以前に読んだ、古宮(2004)でも中心的な考え方の1つでありました。coachingにおいては、教師が教えることは、むしろ少ないほどよいという主張がなされます。