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吉見俊哉『「文系学部廃止」の衝撃』

 

「文系学部廃止」の衝撃 (集英社新書)

「文系学部廃止」の衝撃 (集英社新書)

 

 

 細かい事実の解釈は怪しいと感じるところもあるのですが(別の本を読んだ時にも思ったのですが、グローバリゼーションや新自由主義をややマジックワード的にお使いになられるという印象)、通史や全体的な見取り図を描くことについては、吉見先生はとてもうまい方でいらっしゃると思います。
 1章では、2015年6月の文科省通知を、「文系学部廃止」と突如として過激に報道したメディアの姿勢を疑問視し、戦後日本の国立大学における理系偏重や、国立大学法人化以降の運営費交付金の減少などといった、一連の大学改革の流れの中で捉えられなければならない問題であることが指摘されます。
 2章では、「文系は役に立たない」と言われることに関して、マックス・ヴェーバーを引き、「役に立つ」 とは手段的合理性と価値合理性の両方の次元から成り立つものであり、文系の知は主に後者に位置づくものであるとされます。これによって、 「文系は役に立たない」という主張にくわえ、「文系は役に立たないけれども、必要である」という主張も批判の対象とし、「長期的に見た際に文系は役に立つ」という立ち位置が示されています。

 

 第4章で書かれている、先生自身の研究を学生に徹底的に批判させるというスタイルの授業は、私も体験したことがありました。すでにできあがっている研究を題材にするので、準備の手間がかからず楽だからそういうスタイルを採用されているのかと、当時は失礼ながら思っていました。しかし本書によると、大学設置基準が大綱化されて以降、大学院生が増加・多様化し、最新の英語文献を輪読するというスタイルの授業が成り立たなくなったためとされており、なるほどと思いました。
 現状の「入口管理」から、「出口管理」へと移行すべきというのは、たしかにその通りだと思うのですが、新卒一括採用の雇用システムとも結びついているので、大学のみの取り組みで実現するのは難しい問題です。ちなみに、大学授業料を無償化することから始めようというのが、矢野眞和先生のご提案ですね。