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Goldthorpe (2016) Sociology as a Population Science

 

 

Sociology as a Population Science

Sociology as a Population Science

 

 

Goldthorpe, John H. 2016. Sociology as a Population Science. Cambridge: Cambridge University Press.

 

 Goldthorpeの以前の論文("Causation, Statistics, and Sociology")を読んで、社会現象における確率的なプロセスを彼が重視しているのは理解していました。しかし『「集団科学」(population science)としての社会学』という本を彼が出したというのは、やや意外に感じました。というのも、社会学において集団科学的な思考を発展させたとして、本書でも評価されているO.D. Duncanは、Goldthorpeとは違って合理的選択論者ではなく、考え方に開きがあるように思っていたためです。しかし、Goldthorpeにとってはそこはむしろ対立するものではなく、集団レベルの規則性を説明するために、合理的選択のアプローチは必要ということのようですね。

 個人的には最後の8,9章あたりが勉強になりました。Goldthorpeの潜在結果モデルに対する考えをあまり知らなかったので、興味深かったです。ただし、潜在結果モデルにコミットしている研究にも、かなりばらつきがあるので、やや一枚岩に捉え過ぎではないかという疑問は生じました。Gelman(2011)も引用されていたので、もちろんその点は理解した上でだとは思うのですが。

 

 導入と結論を除いて9章構成になっており、各章のはじめには中心的な命題が提示されています。ちょっと訳してみましょう。Goldthorpeの英語は関係代名詞や挿入句のオンパレードなので、途中で思い切って区切ったり、語順を入れ替えたりして訳さないと、まともな日本語にならないですね。

 

Chapter 1. Sociology as a population science: the central idea

 

Sociology should be understood as a population science in the sense of Neyman (1975).

 

社会学は、Neyman(1975)が述べる意味での集団科学として理解されるべきである。

Chapter 2. Individual variability in human social life

 

Sociology has to be understood as a population science, primarily on account of the degree of variability evident in human social life, at the level of sociocultural entities, but also, and crucially, at the individual level - this latter variability being inadequately treated within the 'holistic' paradigm of inquiry, for long prevalent in sociology but now increasingly called into question.

 

社会学は集団科学として理解されるべきである。それはもっぱら社会文化的な実在の水準における人間の社会生活に見られるばらつきのためである。それのみならず重要なのは、個人の水準におけるばらつきのためである。この後者のばらつきは、社会学において長らく蔓延していたものの現在では次第に疑問視されている「全体論的」な探求のパラダイムにおいては、適切に扱われていない。

Chapter 3. The individualistic paradigm

 

In sociology, understood as a population science, an 'individualistic' rather than holistic paradigm of inquiry is required because of the high degree of variability at the individual level, and further, because individual action, while subject to sociocultural conditioning and constraints, has to be accorded causal primacy in human social life, on account of the degree of autonomy that it retains.

 

集団科学として理解された社会学においては、全体論的ではなく「個人主義的な」探求のパラダイムが要求される。これは個人の水準における高度のばらつきのためである。それにくわえて、個人の行為は社会文化的な条件と制約による影響を受けるものの、その自律性の度合いのために、人間の社会生活における因果的な優位性が認められなければならないためである。

Chapter 4. Population regularities as basic explananda

 

For sociology understood as a population science, the basic explananda are probabilistic regularities rather than singular events of events that are grouped together under some rubric but without any adequate demonstration of the underlying regularities that would warrant such a grouping.

 

集団科学として理解された社会学にとっては、基本的な被説明項は、集団における確率的な規則性である。単一の事象、あるいは何らかの標題の下に括られているものの、その括り方を正当化するような内在的な規則性が十分に示されていないような事象群は、説明の対象とはならない。

Chapter 5. Statistics, concepts, and the objects of sociological study

 

Statistics has to be regarded as foundational for sociology as a population science in the sense that, as the means through which population regularities are established, it actually constitutes the explananda or 'objects of study' of sociology - although always in conjunction with the concepts that sociologists form.

 

統計学は集団科学としての社会学において基礎をなすものと見なされるべきである。それは統計学を手段として集団の規則性は確証され、社会学において説明されるべきもの、あるいは「研究の対象」が構成されるという意味においてである。ただし、常に社会学者が形成する概念と連動していなければならない。 

Chapter 6. Statistics and methods of data collection

 

In sociology as a population science, the foundational role played by statistics in establishing population regularities stems, in the first place, from the need for methods of data collection that are able to accommodate the degree of variability characteristic of human social life, in particular at the individual level, and that can thus provide an adequate basis for the analysis of regularities occurring within the variation that exists. 

 

集団科学としての社会学において、集団の規則性を確証するという統計学の基礎的な役割は、第一にはデータ収集の方法としての必要に由来している。データ収集においては、人間の社会生活において特徴的な、特に個人の水準におけるばらつきに対応できるものでなければならないためである。これによって、その存在しているばらつきの中において起きている規則性の分析のために、十分な基礎がもたらされるのである。

Chapter 7. Statistics and methods of data analysis

 

In sociology as population science, the foundational role played by statistics in establishing population regularities stems in the second place, from the need for methods of data analysis that are able to demonstrate the presence and the form of the population regularities that are emergent from the variability of human social life.

 

集団科学としての社会学において、集団の規則性を確証するという統計学の基礎的な役割は、第二にはデータ分析の方法としての必要に由来している。データ分析においては、人間の社会生活におけるばらつきから生じる集団的な規則性の存在を実証し、形成できるものでなくてはならないためである。

Chapter 8. The limits of statistics: causal explanation

 

While statistically informed methods of data collection and analysis are foundational in establishing the probabilistic population regularities that constitute sociological explananda, statistical analysis alone cannot lead to causal explanation of these regularities.

 

統計的にもたらされたデータの収集と分析は、社会学的な説明の対象である集団の確率的な規則性を確証する上で基礎的なものとなる。しかし、統計分析のみでは、これらの規則性についての因果的な説明にはなりえない。

Chaper 9. Causal explanation through social mechanisms

 

In order to provide causal explanations for established population regularities, causal processes, or mechanisms, must be hypothesized in terms of individual action and interaction that meet two requirements: they should be in principle adequate to generate the regularities in question and their actual operation should be open to empirical test. Advantages lies with mechanisms explicitly specified in terms of action that is in some sense rational.

 

確立された集団の規則性について因果的な説明をもたらすためには、因果的なプロセスあるいはメカニズムについて、個人の行為と相互行為の観点から、 2つの条件を満たす仮説を立てなければならない。その因果的なプロセスが問いの対象になっている規則性を原理的に生成すできなければならないことと、それら実際に働いていることが経験的な検証に対して開かれていることである。ある種の意味において合理的である行為の観点から明確に特定化されたメカニズムには、強みが存在する。