Yin (1981) The Case Study Crisis: Some Answers

Yin, Robert. 1981. "The Case Study Crisis: Some Answers." Adminstrative Science Quarterly 26: 58-65.

 

 興味深かった箇所を中心に。

 

ケーススタディとは何か?

 研究戦略としてのケーススタディの際立った特徴は、(a)同時代の現象について現実生活の文脈に即した検証を試みることである。それはとりわけ、(b)現象と文脈の境界が明確でない場合に当てはまる。実験は意図的に現象をその文脈から引き剥がしている点において、ケーススタディとは異なる。歴史分析は過去の現象に限定されており、関連するインフォーマントに対して調査ができなかったり、関連するイベントが直接の観察ができなかったりする可能性があるという点で異なっている。

 

どのようにケーススタディを報告するか?

 典型的なケーススタディの報告は、予測可能な構造を持たない冗長なナラティヴであり、書くのも読むのも大変なものになっている。こうした落とし穴は、研究が明確な概念枠組みに基づいていれば、避けられる可能性がある。くわえてケーススタディのナラティヴは、 上述したNeighborhood Commission studyのように、 一連のオープンエンドの質問に対する答えに置き換えることができるかもしれない。これは提示するのがより容易であり、読者は支障なく望んだ情報を見つけ、テキスト全体をざっと読むことができる。あるいは、ケース間分析が主要な目的である研究の場合には、いかなる単一のケースの報告を行う必要もないかもしれない。こうした研究は、個別ケースの簡単な要約と、それに続くケース間分析によって構成されうる。
 Milesによって挙げられた問題の1つは、ケーススタディの結果に対するインフォーマントの反応である。インフォーマントの中には報告の内容に異議を唱える人々もおり、Milesは質問紙調査の結果を対象者が見た場合ならば、こうしたことは起こらないと主張している。しかしながら、この問題はケーススタディの使用に原因を求めるべきではない。それどころかMilesは、個別の証拠と集計された証拠に対する反応を混同している。実際のところ、質問紙調査の対象者が自分自身の回答の結果を与えられ、研究者によってこれらの結果がどのように解釈されたかを提示されならば、同じような反感が起きる可能性がある。対象者は、クローズエンドの質問であるために、過剰に単純化された回答を強制的にさせられたとか、研究者は単に回答の解釈を間違っているのだとか、不平を述べるかもしれない。逆に、ケース間分析の結果を確認するように求められた場合ならば、インフォーマントの反応は最小限のものとなるかもしれない。まとめれば、人々は個人化されたデータに向き合った場合には常に敵対的に反応するものであるものの、集計されたデータに向き合った場合にはより寛容になりやすいのである。こうした一連の反応は、ケーススタディ、質問紙調査、他の研究戦略のどれが用いられたかにかかわらず生じる。