読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

青木(2014)pp.63-64,65

青木昌彦,2014,『青木昌彦の経済学入門――制度論の地平を拡げる』 .

 

第2章「制度分析の考え方」

  私はゲームの理論家ではなくて、ゲームの理論を使う立場にあります。そういう比較制度分析の立場からいえば、均衡が多数存在するということは困ったことではなくて、むしろ制度がなぜ多様にあるかということを説明するうえでは、たいへん好都合なことだと思います。
 ただし、多数の均衡があるとしたら、なぜ日本には日本型の均衡が生まれ、アメリカにはアメリカ型の均衡が生まれてくるのでしょうか。これはゲーム理論の内部では完全には説明しきれないわけです。そうすると、やはり歴史的な条件が重要になってきます。制度が重要である(institutions matter)ということは、同時に歴史が重要である(history matters)ということでもあります。

[pp.63-64]

タルコット・パーソンズ(Parsons)などの古い社会学の考え方では、社会的な価値があらかじめ存在し、人は生まれてから社会に入っていくと、家庭教育や学校教育を経てそれらの価値観を内面化していくと考えます。グラノベッターはそういう考え方を批判します。価値というものが人間から独立に、外部に存在すると考えるのは、古い社会学の欠陥です。そもそも、その起源を説明できないからです。規範とは、社会交換をつうじて生み出され、維持されるものです。一方で、新古典派の経済学は、経済取引において利己的な経済主体像を描きますが、これはこれで個人主義に過ぎる見方です。実際には、経済取引というのは、友人関係、取引関係そういう社会関係の網の目のなかに埋め込まれている(embed)わけです。そういう関係のなかで、人々は戦略的に行動していると考えられるのです。

[p.65]