Williams (2016) "Understanding and Interpreting Generalized Ordered Logit Models"

Williams, Richard. 2016. "Understanding and Interpreting Generalized Ordered Logit Models." Journal of Mathematical Sociology 40(1): 7-20.

 

  通常の順序ロジットモデルにおける比例オッズの仮定を弱め、かつ多項ロジットモデルよりは柔軟(あるいは節約的)である一般化順序ロジットモデルについての論文です。著者は関連するテーマの論文をいくつも書いていますが、本論文では「比例オッズの仮定が成り立たない場合にそれをどのように解釈できるか」ということに重きをおいて、5つの具体例を紹介しています。

 

  • (1)モデルの特定化の失敗。本来は比例オッズの仮定が成り立つものの、重要な変数がモデルから落ちていたり、二乗項が入っていなかったりなどして、比例オッズの仮定が満たされていないように見えてしまう場合がある。
  • (2)非線形確率モデルとしての解釈。それぞれのアウトカムが生じる確率をシンプルに示すことで、潜在変数Y*を導入せずとも結果の解釈ができる。
  • (3)独立変数の効果はそれぞれの累積ロジットに対して非対称である可能性。比例オッズの仮定の下では、4値の従属変数において、「1 vs. 2,3,4」、「1,2 vs. 3,4」、「1,2,3 vs. 4」とそれぞれの累積ロジットにおいて独立変数の効果はすべて等しい。しかし、これは成り立たない可能性がありうる。Fullerton and Dixson(2010)は、政府の福祉支出に関して、いくつかの独立変数は支持よりも不支持に与える効果がかなり大きいことを示している。
  • (4)状態依存の回答バイアス(state-dependent reporting bias)。潜在変数Y*の分布はどのグループにおいても同じであっても、観察値を実現させる上での閾値がグループによって異なる場合がある。たとえば、「とても賛成」、「どちらかというと賛成」の間の閾値や、健康状態が「とてもよい」、「まあまあよい」の間の閾値は、回答者が参照するフレームによって異なりうる。
  • (5)回答の「方向」(direction)に影響する独立変数と、回答の「強度」(intensity)に影響する独立変数がある。たとえば、女性は男性よりも極端な政治的態度を示しにくい傾向がある(「とても賛成」、「とても反対」のどちらの態度もとりにくい)。

 

 (4)のグループによって参照するフレームが異なることで、閾値も異なるというのは、前に読んだこの論文で扱われている問題かなと思います。(5)の問題は、不均一分散を許容する順序ロジットでもモデル化できそうです。違いとしては、一般化順序ロジットモデルを用いた場合のほうが、推定に必要なパラメータの数は増えるものの、非対称な効果を検証できるという感じでしょうか。